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北投が育んだ風土の香り

文字-游如伶(ヨウ・ルーリン)

撮影-蔡耀徵(ツァイ・ヤオツェン)

イラスト-陳宛昀(チェン・ワンユン)

湯花作 創業者・毛賢寧(マオ・シェンニン)の職人魂

 

写真 : 湯花作 創業者・毛賢寧(マオ・シェンニン)氏。

「湯の花」は温泉の湯の中に生じた天然の沈殿物で、雪の結晶に似ていることからそう名付けられました。元々温泉の底に沈殿していた泥に特殊な処理をして、湯の花のパウダーにし、それをお湯に溶かして温泉のような水質にすることで、家庭でも温泉に浸かっているような癒しの時間を楽しむことができます。

 

「湯花作」の創業者・毛賢寧(マオ・シェンニン)氏の母親は北投出身で、母親と一緒に公館路の家に帰るたびにいつも道にかすかに、時には強く硫黄の香りが立ち込めていて、子供の頃はよく地熱谷温泉で作られたゆで卵を食べていたと話してくれました。彼にとって、家族や土地とのつながりがあるからこそ、湯の花を使ったビジネスの推進が、意義あるものになっているのです。

写真 : 湯の花の結晶。

 

写真: 湯船の半分くらいまでお湯を入れ、約10gの湯の花パウダーを入れると、温泉に浸かっているかのような感覚が楽しめます。

 

貴重な湯の花は、循環経済の典型モデル

「いわゆる廃棄物とは、まだ利用方法が見つかっていないだけのことで、湯の花は循環経済やサステナブルな産業の最良モデルだと言えるでしょう。」毛氏は2011年から台北市政府と協力し、産学連携を経て北投温泉の湯の花商品を限定生産し、北投温泉の企業に対して、湯の花商品の製造販売の参加を指導しています。

 

ホテルの水道管に温泉水が流れ込むと、温泉を貯蔵している「湯槽」に蓄積され、毎年浚渫が必要でしたが、リサイクルした後は湯の花パウダーにして、手作り石鹼や基礎化粧品等に利用でき、「テイクアウトできる温泉」として従来の温泉産業に付加価値を付けることができます。温泉業者の湯の花商品を普及させるため、毛氏は2016年に湯の花商品を専門に販売する「湯花作」を創業しました。

 

北投の湯の花研究の最初のメンバーだった同氏は、生産から業者への指導、製品の認証システムの構想、マーケティング戦略の策定、ブランドの立ち上げ、店舗運営など、産業チェーンのあらゆる事柄に携わりました。その後、多忙を極めたため原点回帰を決意し、湯花作は製品の研究開発に専念しようと、北投の業者・藍智玲(ラン・ズーリン)の「溫泉小舖」と提携し、その店舗を主な販売チャネルとして、地域化を更に深めていきました。

写真 : 「地熱谷小舖庇護工場」は湯花作の販売チャネルの一つです。

 

湯の花の採取と生産につぎ込む職人魂

毛賢寧氏は、日本の温泉地を訪れ、湯の花の採取や作り方を学びました。例えば、「草津温泉」は湧出量が多いため、「湯畑」に木製の樋を設けることで、温泉が流れ込む時に、湯の花が沈殿し、温泉水はその樋の上を持続的に循環し続けるのです。また、「明礬溫泉」の場合は、水量が比較的少ないため、硫黄が発生する部分に石畳を作り、その上に青粘土を敷き詰め、それがシャーレのようになって、湯の花は粘土層の表面に結晶として成長し、定期的に採取しやすくしています。これらの江戸時代から続く技法は、国の重要無形文化財に指定されています。

 

湯の花づくりは、古くからある伝統技術で、毛氏の役割は職人に近いものです。「1tの温泉水から1gの湯の花しか精製できず、その採取は大変困難かつ面倒な作業ですが、それだけ湯の花は貴重なものだと物語っているのです。」

 

北投温泉の源泉はほとんどが陽明山国家公園内にあり、保護規制があるため、主に温泉業者と協力し、ホテルの湯船から原料を調達しています。また同氏は、「古い温泉宿には、地下に湯船がある場合もあり、密閉された環境では有毒ガスの硫化水素が発生しやすく、もし湯の花の品質や安全に疑いがある場合は提携しません。」と、湯の花の採取の危険性も指摘します。

 

採取作業は、温泉街がオフシーズンの時に行われることが多く、夏場は防護服を着て、滝のような汗を流しながら一回一回掘るので、採取作業は更に過酷なものになります。あるホテルのオーナーが、毛氏を「商売をしない正直者」だと評したことがあるそうですが、この言葉は湯の花産業で一心不乱に働く彼の愚直さをよく表しています。

写真 : 陽明山の硫黄谷は、北投温泉の湯の花の源泉の一つです。

 

北投人の思いをご家庭へ

湯の花産業は、一見、地方創生のイノベーションのように見えますが、実際は、北投の湯の花製造の技術と発展は、日本統治時代の陽明山での硫黄採掘事業と温泉観光が盛んだった頃まで遡ることができ、当時の硫黄業者が販売していた「七星湯の花」は、台湾だけでなく日本の本土でも売られていました。しかし戦後、北投の湯の花産業は次第に影を潜め、十数年前に復活を遂げるまでは、忘れ去られていたのです。

 

湯の花のプロモーションを始めた当初、毛氏が出会う人ほとんどの人は湯の花のことを知らず、この地方の名産品をもっと多くの人々に知ってもらおうと、毎月北投のバザールに出向き、商品を販売していました。そして何年もの月日を経て、北投温泉の湯の花は北投を代表するお土産となり、湯花作と北投温泉博物館とのコラボから生まれた手作り石鹸のように、様々な団体との提携も多くなりました。陽明大学と交通大学が合併した時、湯の花石鹸が卒業生への贈り物に選ばれたそうです。「当時、二校は地元の名産品をそれぞれ選んでいましたが、北投にある陽明大学に湯の花石鹸が選ばれ、湯の花が地元で認知された証拠だと思いました。」今では、温泉を訪れる人々は、その風土に癒されるだけでなく、北投人の思いを持ち帰る事もできるようになりました。「身体と記憶と懐かしさを繋ぐ湯の花の匂いも、北投を代表する香りなのです。」と毛氏は話してくれました。

 

「北投温泉湯の花パウダー」ができるまで

1. 原料を採取する : 温泉地の「温泉生成施設」や温泉宿の「湯船」から湯の花の原料を採取します。その時、湯船の温泉水は全て抜いてから、シャベルで沈積物を掘り起こし、米袋に入れます。

2. 脱水と乾燥 : 湯の花の原料は含水量が高い為、袋のまま自然乾燥することができます。もし、完全に乾燥させたい場合は、IHコンロや乾燥機を使用することができ、紫外線殺菌の効果もあります。

 

3. 不純物の除去 : 脱水・乾燥した湯の花の原料は、葉っぱや砂利が混じっているので、先ずふるいにかけます。

 

4. パウダー状に粉砕 : 湯の花の原料を粉砕機で200メッシュ以下に粉砕します。その後、検査に提出し、政府衛生福利部の「化粧品微生物許容量基準」に合格して、硫黄含有量45%以上、粒子径200メッシュ以下などと認定されたものが北投温泉の湯の花パウダーとなります。

コールドプロセス製法の「湯の花石鹸」

湯の花石鹸は、コールドプロセス製法で作られています。油脂と苛性ソーダを十分に撹拌し、温度を35℃程度の低温に保ちながら、湯の花パウダーを適量加えます。撹拌する間の加熱は不要で、石鹸の素地にとろみがついたら型に流し込み、35~40℃で24時間放置した後、型から取り出して1日置きます。その後、職人が石鹸を切り分け、形を整えてから、スタンプを押します。そして、温度と湿度が安定した風通しの良い場所に置き、4~6週間で手作り石鹸の出来上がりです。現在販売されている湯の花石鹸は、石鹸100gに対して湯の花5gというベストな配合となっており、濃い硫黄の香りが漂ってきます。