真夏の北投、十種の楽しみ方
テキスト / 郭慧
撮影 / 蔡耀徵
画像提供 / 豆咖啡Beancafe
100年前の台北人の間では、夏の夜に列車に乗って納涼をしに北投へ行くのは流行っていたが、現代人は夏の北投をどう楽しむべきか?北投で生まれ育って、広い人脈を持つ北投「温泉小舗」のオーナー藍智玲さんに、夏の北投の楽しみ方を聞いてみた。
北投の香りをお持ち帰り:湯の花
北投に訪れる旅人には欠かせない温泉入浴は、北投の住民にとっては生活の一部である。浴場での入浴のほか、自宅で温泉を楽しめられる方法もある、それが「湯の花」だ。
「北投火山温泉の硫黄が硫気ガスを生成し、その気体が水蒸気と反応して硫酸となり、土壌のミネラル成分が溶解され温泉の中で雪のような結晶が生成される。日本人はそれを『湯の花』と呼ぶ。」湯の花を10年以上研究して来た「湯花作」のオーナー毛賢寧さんがこう語った。
湯の花は日本の戦国時代から、武将達が湯治療養をする時に重宝していた。台湾では1921年(大正10年)の時から、入浴剤として湯の花を販売する記録があったが、戦後の台湾温泉業者は湯の花を廃棄するようになった。毛さんは台北市政府産業発展局と手を組んで色んな研究を経て、湯の花の新しい可能性を再発見した。湯の花の使った石鹸や入浴剤を開発して、新たな北投名物を作り上げた。
1グラムの湯の花は1トンの温泉水から結晶させた物。自宅で使用する際は1リットルのお湯に10グラムの湯の花を入れるだけで、気軽におうちで北投温泉の雰囲気を味わえる。温泉施設は動かせないが、湯の花は家に持って帰れる。今度北投に来たら、地熱谷小舗に立ち寄って心身ともに癒してくれる「湯の花」をゲットして、おうちで北投温泉気分を味わってみてはいかがでしょうか?
Info/地熱谷小舖庇護工場
Add/台北市北投區中山路30-10號2樓(地熱谷公園內)
FB/地熱谷小舖庇護工場
風呂上がりに飲みたい濃厚な一杯:杏福の仁
店長の謝さんにとって、子供の頃お爺ちゃんと北投温泉の大衆浴場で入浴したあと、夏の夜の涼しい風を浴びながら、濃厚な杏仁茶を飲むことは今でも忘れられない思い出だった。三年前にそのお爺さんが亡くなられて、謝さんは思い出の味を再現したいと思い、長年勤めてきた製造業から離れて、杏仁茶を研究し始めた。
飲食業経験ゼロの謝さんは修業のために、わざわざ台南に行って杏仁茶を長年作ってるご夫婦の元に訪れた。修業を終えて北投に戻った後自宅の外で「杏福の仁」を開店し、南杏仁と北杏仁とお米を2時間かけて煮込んだ濃厚杏仁茶を販売し始めた。「杏福の仁」の杏仁茶はホットとアイスの他に、砂糖入りか無糖かも選べる。砂糖入りの杏仁は粗めに挽いて、ナッツ特有の食感を楽しむことができる、無糖は細かく挽いて、サッパリとした風味を強調する。温泉に入った後、冷たい杏仁茶を飲みながら北投の生活風景を眺めるのがおすすめ。
Info/杏福的仁
Add/台北市北投區育仁路8巷9號
FB/杏福的仁
北投で命名した旨いコーヒー:Bean Cafe
北投の人はコーヒーが飲みたい時に、真っ先に思い浮かぶお店は多分北投で三つの店舗を持つ、13年間地道に経営してきた「Bean Cafe」でしょう。オーナーは「豆小宝」と呼ばれ、昔は広報関連の仕事をしていたが、何年か経って「自分らしいライフスタイル」を取り戻したくて、北投へ戻ることにした。
父親は元々コーヒー業界に携わっていて、豆小宝さんは子供の時からコーヒーのことに親しみを感じてるので、北投に戻りカフェを開設した。50種類以上の新鮮なコーヒー豆を顧客に提供したり、野外シネマを開催したり、映画⦅北投の最終列車⦆を上映して、北投の歴史をお客さんに紹介する事もあった。お店の看板コーヒー豆は「胭脂北投」、ハンドドリップ中心の稲香と北投の2店舗も、サイフォン式中心の「豆三店」でも、「胭脂北投」を違う淹れ方による一味違う風味が堪能できる。夏の温泉郷に訪れる際、スッキリした風味の持つアイス胭脂北投を片手に、素敵な旅をはじめてみないか。
Info/豆咖啡
Add/(豆三店)台北市台北市北投區育仁路73號
FB/豆咖啡 Beancafe。豆三。nursiphon。莊園咖啡烘焙 & 虹吸咖啡專門店
子供達の思い出の味:PAW PAWベビーカステラ
北投の子供達が放課後に集まる場所と言えば、長安公園の隣にある「PAW PAW ベビーカステラ(跑跑雞蛋糕)」は絶対外せない。お店は北投在住のご夫婦小竹さんと小愛さんが共同経営している。三年前から子供の成長に付き添いたいため、デザインとIT関連の仕事をしていた二人は会社をやめ、愛犬の「欧欧(おーおー)」ちゃんを連れて、北投でベビーカステラの移動販売を始めた。そして2020年は長安公園の近くにお店を作り、緑豊かな環境で天然食材のみを使うベビーカステラを作ることになった。
よくミックス粉を使う市販のベビーカステラと違って、お二人は天然食材にこだわっている。小麦粉は日清のバイオレットと、フランス産のバター、そして動物福祉卵も使用し、毎日作り立てのベビーカステラを提供して、中身の具もチーズ以外は全てオーガニック農産品を中心に使用した自家製。二人は研究と努力を積み重ねて、PAWPAWベビーカステラ特有のメニューを作り上げた。定番の「ダブルチーズ」や「ミルクバター」の他に、ここでしか味わえない「枝豆ホワイトソース」も大人気!
Info/跑跑雞蛋糕
Add/台北市北投區育仁路104巷
FB/跑跑雞蛋糕
炙り焼の香りが漂う夏のひと時:蔦焼日式居酒屋
気温が30℃も超える猛暑の日に、冷房の効く居酒屋で酒のすすむ焼き物を食べながら、キンキンに冷えたビールをガブガブ飲むのは、夏一番の楽しみ。北投の人は居酒屋といえば、殆どみんなが一番最初に思い浮かぶのは蔦焼。
日本式居酒屋である蔦焼の一号店が、日本文化に深く影響された北投でオープンした。「ユニーク」さ重視の蔦焼は、どの料理も手を抜かないこだわりがある。藍智玲さんお勧めの鮭チャーハンに入れる、鮭丸ごと一匹で作った鮭フレークは塩加減が絶妙で鮮度も抜群、食べると箸が止まらなくなる。
鳥もも肉の塩焼きは少量の塩でもも肉の風味を引き出し、プリプリな食感と天然の甘味が人気のポイント。
鶏のもも肉、むね肉、あと軟骨をミンチにして、丁寧に混ぜてから焼き上げる名物のつくね団子はふわふわで、時には軟骨のコリコリさも楽しめて飽きのこない一品だ。烏骨鶏卵の黄身に付けながら食べると、つくねはより滑らかな食感になる。居酒屋では欠かせない一夜干しは、ツバメコノシロとシシャモの二種類があって、魚の身はきめ細やかで旨みもたっぷり。
料理だけで無く、蔦焼はお酒のチョイスにもこだわっている。フルーティで、終わりにほんのりした苦みを持つエチゴビールはタレ味の焼き物に合わせたり、爽やかな白ビールなどの日本産ビールでペアリングを楽しむ事もできる。
開店4周年に向けて特別に企画した日本酒「蔦酒」は、フルーティな香りをして後味が甘く、お刺身や握り寿司やサラダなどのさっぱりした料理と相性が良く、日本酒好きには納涼しながら飲みたい一杯だ。
Info/蔦燒日式居酒屋
Add/(北投店)台北市北投區溫泉路30巷24號
FB/蔦燒日式居酒屋
暑い日にはさっぱりしたこの味:KEN BAKERY
MRT北投駅の近くにある小さなパン屋:KEN BAKERY、見た目は目立たないが、店の中にある天然酵母を使用した手作りパンは北投の人々を虜にした。
オーナーのKenさんは元々パン屋ではなくて、子供の時からニュージーランドに住んでだKenさんは、学校から卒業した当初、親が経営する織物工場を受け継いたが、途中趣味の版画創作に没頭し、最終的に同じく趣味であるパン作りに辿り着いた。Kenさんはこう言った。「五感を活かすパン作りと版画創作はすごく似てると思う。私は最初台湾のベーカリーで修業をして、更にサワードウブレッドの勉強をしにオーストラリアのシドニーへ渡って、北投に戻りKEN BAKERYを作った。」
Kenは異国の地で学んだサワードウブレッドの技術を、台湾の風土を加えてKEN BAKERYならではのパンを作り出した。自慢の天然酵母は台湾の熱帯フルーツを陽明山で、その土地の空気と共に樽の中で培養した酵母菌。台湾人の好みに合わせてパンのクラストを薄くして、中身がよりしっとりになる様に改良し、小麦粉の香りもちゃんと味わえる。洒落たパンよりも、台湾人の食卓にも見られるような日常の食生活を彩る美味しいパンを目指してる。
暑い日が続く中、KEN BAKERYの無花果パンを一切れは如何でしょうか?ライ麦粉と小麦粉を使い、さらにドライいちじくとレーズンの爽やかな風味が効いてて、夏バテもぶっ飛んじゃう美味しさだ。
Info/肯肯烘焙
Add/台北市北投區光明路2巷13-3號
FB/Kenbakery
温泉街に佇む日式カフェ:小金魚ミルクティー・コーヒー館
北投温泉路に佇む小金魚ミルクティー・コーヒー館に入ると、目の前に現れた白い壁と日本風のインテリアから、ちょっとした涼しさを感じた。2017年にオープンした小金魚は地元の「黒金魚カフェ」の姉妹店で、黒金魚のオーナーと友人の金玲さんが共同経営している人気カフェだ。看板メニューは林華泰茶行の茶っぱをベースにした、新鮮牛乳とザラメ冬瓜(トウガン)シロップを使った風味豊かなミルクティー。夏にピッタリのレモンコーヒーも、コンビニがシチリアコーヒーを発売するずっと前からお店で物凄く人気で、夏場に飲むと目が覚めるほどのスッキリした酸味が元気をくれるでしょう。
Info/小金魚奶茶咖啡館
Add/台北市北投區溫泉路6號
FB/小金魚奶茶咖啡館
旧倉庫に身を潜むスイーツパラダイス:拾米屋Sheme House
最近台湾のスイーツ業界新しいお店が続出する中、北投の古い米倉庫でお店を構える拾米屋は増え続けるライバル店に怯えず、美味しいスイーツでファン達の心をしっかりとつかんでる。
オーナーの蘇怡帆さんが台湾大学の建築と城郷研究所で勉強していた頃、環境に優しい農業に触れて、そのあと手作りチョコやドイツケーキ屋で働きながら修業してた。その経験が現在の拾米屋のスイーツの形を作った。2012年、蘇さんは身に付けた菓子作りの技術と地元食材への愛情を持って
元旧倉庫にあるお店で、ふわふわでしっとりした米シフォンケーキなどのお菓子を作り始めた。さらに「ジャスミン・赤ウーロン・桃のリキュール」や、「東方美人茶とウィスキー」など、お酒とお茶の風味を融合した高級チョコはICA世界大会で賞を獲得した。
最近もまた北投の食材について研究し、筍やタンカンなどの食材でチョコを作り、北投の風土をスイーツで表現する。
ここに来たら名物のシフォンケーキとチョコレートはもちろん、エスプレッソの代わりに酉鬼啤酒(Ugly Half Beer)の「チョコレートシフォンポーター」のアイスクリームで作ったアフォガートもお勧め。爽やかで軽やかな舌触りを感じながら酷暑を克服しよう。
Info/拾米屋
Add/台北市北投區大同街153號一號倉庫
饕客必訪的良食精選:拾米TO GO
甘党が大好きなデザート専門店の拾米屋もあれば、お食事のしたいグルメな旅人なら駅から直ぐの「拾米TO GO」がおすすめ。こちらは「GaoFei Coffee」、「Miss Mihua Dessert」、「55th Street Craft Brewery」、「上清料理」の四つのブランドが共同経営するお店である。
拾米TO GOに入ると、まるで台湾の風土を一覧出来る展示会に来た気分。コーヒー担当の「GaoFei」のオーナー詹兆仁は高校の時からコーヒーの研究を始めて、生豆のインポーターで就職した事もあり、長年の知識と経験こそ、コーヒーの風味の決め手とも言える。店のスタッフが厳選したドラフトビールや各国の瓶ビールも店に置いてある。
良質の食材を使って調理された料理もお店の見どころ。一見変哲のないライスだが、実はほんのりしたお米のいい香りと程よい粘り気のある、花蓮産の米楽銀川オーガニック米を使ってる。秘伝カレーのトッピングは彰化全祐牧場の放牧卵。更にカレーセットの「豚バラ肉のハーブ焼き」は花田喜彘の良質な豚肉を使用した。パンは野上パンや舞麦窯パンなどの名店から調達した物。暑い日が続く中、こちらの食欲をそそるさっぱりした料理を食べるのがベストチョイスかも。
Info/拾米TO GO
Add/台北市北投區泉源路12號1樓
FB/拾米 to go
甲乙付けられないかき氷屋と三軒の紅茶スタンド、今日はどれにする?
上記の北投のお店はもちろんどれもお勧めだが、北投の人にとって夏といえば、かき氷屋と紅茶スタンドは絶対欠かせない存在。人気のかき氷屋なら「陳家かき氷」と「北投巧涼古早味冰熱甜品」の二軒、それぞれのファンが多く、夏になると無性に食べたくなる昔懐かしい味。
紅茶スタンド「北投本土味明泉紅茶」の紅茶と仙草ドリンクが有名で、「高記茶荘」は紅茶の他にウーロン茶と緑茶をブレンドした「無憂茶」もとても人気。「蔡元益紅茶」はメイン商品の紅茶以外、新鮮なフルーツティーもみんなに愛されてるメニュー。どの店のどの味も、北投の夏の代名詞とも言えるでしょう。